一般読者向けに物理学をパズル形式でやさしく解説した本である。著者が1972年に著したブルーバックスの新装版で、パズル物理入門の本の続編にあたる。とくに本書では副題が示すように、結果に意外性を伴うような問題を集めてある。全体で95問のパズルの問題を6通りに分類して、それぞれアルキメデスのパズル、ガリレオのパズル、ニュートンのパズル、ベルヌーイのパズル、アインシュタインのパズル、近代物理学者のパズルという表題にして、それぞれの学者の業績にちなんだ題材を含むよう工夫している。さすがに最後のグループをひとりの物理学者で代表させることはできなかったらしい。 問題の一例として、同じ形で同じ重さの円筒形の缶詰を同時に斜面に沿って落とすとき、缶詰の中身が固体(牛肉)の場合と液体(ジュース)の場合、どちらが早く下に到着するか。中身が固体の缶詰はころがり、中味が液体の缶詰は滑るため、斜面の角度が同じでも加速度が異なり、下まで到着する時間も異なる。これでも結論がわからないときは、本書84ページを参照。 この本の前半に出てくるパズルの多くは、教室で実験して確かめることができる。学校のゆとりの時間などに試してもらうと、生徒たちは楽しみながら物理の考え方を習得できるかもしれない。 本書で扱っている内容としては,章の表題にあげた物理学者たちの顔ぶれから想像できるように、力学およびその周辺の話題が多い。前著では少なかった流体力学の問題を意識的に含めてある。今回は、電磁気学や量子論は少ない。また元の本が30年前の出版だった関係で、超ひも理論だのクォークだのといった現代物理学はほとんど含まず、大部分は古典物理学から近代物理学までである。縦書きの本で、数式の使用をできるだけ控えて、物理学のエッセンスを伝えようとする著者の意気込みが、行間からあふれ出ている本である。(有澤 誠)
講談社
新装版 パズル・物理入門―楽しみながら学ぶために ブルーバックス クイズで学ぶ大学の物理―たいくつな力学と波動がおもしろい (ブルーバックス) 新装版 マックスウェルの悪魔―確率から物理学へ (ブルーバックス) 新装版 不確定性原理―運命への挑戦 (ブルーバックス) 新装版 四次元の世界―超空間から相対性理論へ ブルーバックス
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