磁力と重力の発見〈3〉近代の始まり
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商品カテゴリ: | 物理学,化学,数学,地学,科学,学習,知識
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セールスランク: | 49437 位
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高尚な趣味の世界
評判だけが随分と一人歩きしている気がする『磁力と重力の発見』、科学史研究家でもない限り実際に読んで面白いと思う、あるいは面白さが分かりうるのはこの3巻目だけのような気がする。「近代の始まり」であるから、ファラデーやマックスウェルすら出てこない。学校教育で物理を習った人間が磁力と聞いて連想するような人物は全巻通してほとんど登場しない。重力のニュートンとケプラーはこの第3巻近代黎明編でやっと本格的に扱われる。要するにそれ以前の時代は“知らない人の話ばかり”なのである。
前著『重力と力学的世界』『古典力学の形成』に比べると、現代的な観点から数式を用いた表現と比較しながら歴史上の偉大な科学者の思考を追体験する、といった理系の学説研究らしい楽しみに欠ける。『熱学思想の史的展開』のように、いま熱力学を理解するのに直接役立つ情報が得られるわけでもない。実態は文学部で扱うような技術史の専門書に近い。
本書は著者山本義隆のすばらしい情熱と努力の結晶である。それは誰もが認めるだろう。しかしこの本は実用性がなく、ほんとうはとてもマニアックで読者の限られる本だということを記しておきたい。某大新聞などの書評で、学生運動崩れの連中が読んでもいないくせに「万人必読の大名著」のように喧伝しているのに対する天邪鬼のつもりである。
魔術的な遠隔力の科学理論化成る
近代の夜明けは、明治時代が華やかな人物列伝で飾られるように、この巻も、教科書で聞き慣れた多くの科学者が登場する。それら科学者が、得体の知れない魔術的な遠隔力を合理的なものとしてどのように認識してゆくかがドラマチックに描かれる。この巻で、初めて数式が登場するが、それは、この時代になって初めて定量的な実験物理学が成立することに照応する。もちろん、数式をすべて追わなくともそのドラマの筋を追うことは可能である。でも、分かるところだけでも読みとればそれだけリアルな姿をみることができる。この巻は、ケプラー前後から始まってニュートンを経てクーロンまでのドラマを描いている。 きら星のように登場する大学者の評価が教科書などのそれと違うところはおもしろい。ごく一部だけ紹介すると、たとえば、ガリレイは合理的すぎて、またデカルトは単純すぎて磁力、重力の科学理論化に失敗した、などであるが、それがベーコンやニュートン、その他についてもそれぞれ開陳される。特に、デカルトの科学史上の役回りは、磁力、重力以外でも従来の評価の主流とはかなり違う。そのあたりのおもしろさを原文にあたって味わってほしい。 誰かが新しい立論をするとしばしば批判や非難が出る。それにどう反論したか、をみると改めてその立論により何がどう前進したのかが分かりやすくなる。そのような3巻に共通する書き方も、この長いドラマをいっそうドラマチックに仕立てている。 著者の視点のユニークさは、30年以上にわたって持続しているようである。
みすず書房
磁力と重力の発見〈2〉ルネサンス 磁力と重力の発見〈1〉古代・中世 古典力学の形成―ニュートンからラグランジュへ 一六世紀文化革命 2 一六世紀文化革命 1
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